「ありがとう」という処方箋

すべてに感謝して

フラワーアレンジメントのボランティアをしていた介護施設グループホームに
行ってきました。
コロナ禍の前は、皆さんが楽しくお花をアレンジし、素敵な作品を作っていました。

懐かしくてお顔だけでもと、久しぶりに伺うと・・・
当時と全く様子が変わっていました。

フロアーにいらっしゃった9人の内、編み物をしていた方が一人、
童話を読まれている方が一人で他の方はほとんど、
車いすの上やテーブルに伏して眠っていました。

この方たちは、当時、はさみを握ってお花をカットし、楽しくお花を活けていたのです。

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これが「老い」というもの・・・わかっていても心が痛みます。

スタッフさんの顔ぶれも違っていました。
そらくケアーやサービスの内容も変化したのでしょう。
スタッフさんのご苦労や大変さが伝わってきました。

ところで、以前、認知症について、井上貴裕医師(一心病院 精神科・心療内科)が書かれた新聞記事を抜粋しました。

以前、見学に行った高齢者のグループホームでの出来事でした。
その施設の利用者さんは他の施設の方と比較し、

明らかに表情が明るく印象的でした。
その理由を施設長さんに尋ねたところ、ここの施設では、

何をしても『ありがとう』と言っている」とのことでした。

良いことをして「ありがとう」というのは当たり前ですが、
その施設では、ご飯をこぼしても、他の利用者さんと喧嘩しても、
トイレの失敗をしても「ありがとう」ということを徹底していたそうです。

認知症を患っている方は、もし間違ったことをして、
他人から正しいことを教えられても、それは理解できません。
もし怒られても、そこから学ぶことはなく「怒られた」という

悲しい感情だけが残ってしまいます。

では、逆に間違ったことをしたときに「ありがとう」と言われてしまったら
正しいことをしたと思い、間違いを助長してしまうのではないかという意見も

あると思います。
しかし、認知症の方は「ありがとう」と言われたからと言って、
間違った学習をすることもなく、「嬉しい」という感情だけが残るのです。

そのように何をされても「ありがとう」を徹底することで、
表情が穏やかになり精神的に安定してくるため、
最終的に怒りっぽさや問題行動は減っていくとのことでした。

認知機能が低下してしまった状態で、
さまざまなことが理解できなくなってしまっても、
優しくされると嬉しくなり、またぞんざいに扱われたり、
きつい言葉を掛けられると悲しくなります。

認知症は脳の病気であり、記憶力や理解力と言った認知機能は低下しますが、
人としての「心」はそのまま残っているのです。

出典:「認知症でも幸せになれる」Sunday世界日報

この手記を読んで、認知症ケアにおける「ありがとう」という言葉の力を
改めて感じました。
特に、認知症を患っている方々に対して、どんな状況でも感謝の気持ちを示すことで、
彼らの心に穏やかさや安定感が生まれるという考え方は、とても温かいアプローチだと

思います。

認知症の方々は、記憶や理解の面で困難を抱えることが多いようですが、この手記には、
誰にでも「心」は依然として存在していることを感じました。

優しく接することがその人たちの心に直接作用し、ポジティブな感情を引き出すのだ
という点は、ケアの本質を捉えているように感じます。

結局、人間は誰しも、どんな状態にあっても優しさに触れると嬉しくなるものです。
その意味で、「ありがとう」という言葉がどれほど大きな影響を持つのかを、

改めて感じさせられました。

この施設での取り組みは、認知症ケアの新たなモデルケースなのでしょうか。
問題行動や怒りっぽさが減少するという結果も、単なる理論ではなく実際に効果があることを示しており、このアプローチはもっと多くの認知症患者さんが穏やかで安心した生活を送れる可能性と希望を示しています。

また、感情を大切にすること、それが人としての尊厳を守ることにつながるという視点は、
何も認知症ケアだけではなく、家庭や学校、職場などすべての人間関係においても非常に大事なことだと感じました。
改めて家庭生活の中でちょっと反省させられました。

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