美しい心情に呼びかける

愛と許しで
高森顕徹さんの著書の中に
明治33年に亡くなられた博多の万行寺のご住職のお話があります。
近代の名僧と言われるそうです。
だいぶ古いお話です。

ある夜、師の寝室に強盗が押し入り

「金を出せ!早く出さぬと殺すぞ!」と。

                                                     「金は床の間の文庫の中にある」

静かに師が答えると

強盗は文庫を抱えて急いで立ち去ろうとしました。

「待ちなさい・・・」

                                                      「何か用か?」

にらみつける強盗に師はおだやかに言いました。

「実はその金はのう、仏様からのお預かりもの

本堂に行って、一言お礼を言ってから帰りなされや」

                                                       すると泥棒は素直に本堂に行き

頭を下げて帰って行ったそうです。

                                                        やがて、師に警察から呼び出しがあり

あの犯人が捕らえられたのです。

 「金品を取られたならすぐに届けてくださらないと困ります」

                                                  「いや、盗られた覚えはありませんが…」

 「そう言われても犯人がはっきりと白状しています」

                                                       「それは何かの間違いでしょう。

確かにある晩、金が欲しいと言ってやってきた者はいた。

だが、その人には仏様にお礼を言って帰りなさいと

与えはしたが盗られたのではない」

                                                            やがて、刑を終えて出所した泥棒さんを師は

「因縁のある男だ、私の寺の会計係にちょうど良い働いてもらおう」

身を引き取ったのです。

                                                        感激した彼は立派に更生し

生涯一度のミスも犯さなかったそうです。

 
ところで・・・
このお話とよく似たお話があります。
ヴィクトル・ユーゴーによって1862年に出版された
有名なフランスの歴史小説『レ・ミゼラブル』です。
 
この二つのお話は何を言いたかったのでしょう・・・
 
人をごまかすような人間にも良心があります。
相手に心から信頼され、
正直で公正な人間として扱われると、
不正な事は出来ないものです。
たとえ相手がどのような人であっても
受け止め認め、許してあげる・・・
“人の美しい心情に呼びかける”
 
人間の愛と信頼関係は、
どんなに不条理な世界であっても、
人と世界をも変えることができる
 
著者の高森顕徹さんヴィクトル・ユーゴーそう言いたかったのでしょうか・・・。
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