誰にも言えない心の奥にずっとしまい込んできた秘密。
人に言えない秘密って、誰でも持っている。
カサカサと落ち葉の積もった街路地を歩くと
あの日の光景が蘇ってくる。
あの日・・・
友人から絶対的な秘密を打ち明けられた。
街路樹の落ち葉の上を二人で歩いているときだった。
彼女はこんなことを言った。
「息子は夫の子ではないの。他の男性の子なんです。それを夫も息子も知りません」
「35年も長い間、夫と息子を欺いて生きてきました」
誰にも言えなかった過去。
消したくても消せない過去。
後ろめたい思い
罪意識と懺悔の思い
彼女はどんなに苦しんできたのだろう・・・
これまで懺悔と償いの気持ちで生きてきたと・・・
どんなに辛いことがあっても、どんなに自分が傷ついても、
夫や息子の為にじっと忍耐してきたと・・・
しばらく私たちは黙って歩いた。
突然出た言葉・・・
「もういいんじゃない」
悩まななくていい・・・
苦しまなくていい・・・
充分苦しんできたのだから・・・
充分償って来たのだから・・・
天は既にすべてを許しているはず・・・
懺悔のつもりで私に話した秘密
足元にまとわり付いた落ち葉と一緒に
秋風がどこかへ持ち去った。