修学旅行で奈良の薬師寺に行って説法を聞き、
今でも忘れられない一句があります。
伝教大師最澄さんの「忘己利他(もうこりた)」という言葉です。
説法してくださったお坊さんが、おっしゃいました。
「『もう、懲りた』と思わないで、またおいでください」
面白いダジャレにみんなで大笑いした覚えがあります。
お陰様でその時覚えたこの言葉、
あの時は、あまり深く考えてみませんでした。
天台宗、酒井雄哉大阿闍梨の著書『一日一生』の中に
次のように著しています。
僕のいる比叡山の教えに「忘己利他」という教えがある。
「己を捨てて他を利すればいい。そうすれば皆が幸せになる」と説いているんだ。
自分が何かをできるかどうかはあまり関係ない。
何かを達成できてもできなくても、自分を捨てて他を利するということを
心掛けた生き方をしていればいい、というもの。
成功したからと言って得たものを
自分だけの懐へ入れてしまうのは良くない。
得たものを人に分けてあげればいいんだ。
何をするにしても、自分がたった一人で
できたなんてことはないんだ。
ここまで生きてこられたのは
たくさんの人に支えてもらって来たからだし、
いま生きている間にも、大勢の人に助けられているんだよ。
だから、自分は自分、人は人だなんていう考えは良くないよね」
「一生の終わりに残るものは集めたものではなくて、
与えたものとなります。
人は一生の間にどれだけの愛を集めたかによってではなく、どれほどどのような愛を与えたかによって裁かれます」(渡辺和子)