くわえたラケットでスマッシュ!~ 東京パラリンピック~

ある日の出来事
口にくわえたラケットでショットを打ち、
右足でトスしてサーブ。
 
両腕欠損のため、こんなプレースタイルで注目を集めているのが、
卓球エジプト代表男子、立位で最も障害の重いクラスの
イブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥ選手(48)
 
オンリーワンのプレースタイルが生まれた背景には、
「努力で不可能を可能にしたい」という強い信念があった。
 
 
<ハマドトゥ選手のストーリー>
エジプトの北部の村で育ったハマドトゥ選手。
10歳のとき、電車のドアから落下する事故で両腕を失った
1年間は、「哀れみの目を向けられたくない」と、
家の外にほとんど出なかった。
 
その後、スポーツを勧められ、まず挑戦したのがサッカー。
しかし、バランスが取れず何度もケガをしたため、諦めた。
 
そんなとき、村のスポーツ施設で卓球見て魅力を感じた
友人たちの卓球の試合の審判をしていたところ、口論になった。
友人に「プレーできないくせに口出しするな」と言われ、
ハマドトゥ選手の心に火がついた。
「両腕がなくても、卓球はできる」
「できないことなんてないと証明したい」
と、卓球に打ち込んだ。
 
努力で身につけたプレースタイル
1年かけて、口でプレーする技術を習得した。
 
右足はボールをつかむため、シューズは履かない
さらに、サーブは、右足の指でボールをトスして打つ方法を編み出した。
 
ラケットを固定する歯、ボールをスマッシュする首、
体全体を支えトスする足、それらすべてをドクターと相談して、
トレーニングをしてきた。
長年の努力の末、国際大会に出場するまでになった。
2014年、東京で開催された世界大会のエキシビジョンマッチに招待され、
水谷隼選手など世界トップの選手たちとプレーした。
その姿が、動画サイトなどで話題になった。
対戦した中国の選手も「信じられないほど強い」と驚いた。
 
2016年には、パラリンピックに初出場し語った。
「私たちは何だってできる!」
「日本は不可能を可能にしてきた国。
私も(同じ)メッセージを東京大会で伝えたい」
 
48歳、3児の父であるハマドトゥ選手が、
「アスリート人生の最後の舞台」として
挑んだ今回の東京パラリンピック。
 
8月25日の男子シングルス予選リーグ初戦では、
足に障がいがある韓国のパク・ホンギュ選手と対戦した。
鋭いショットなどでポイントを奪う場面もあったが、
ゲームカウント0対3で敗れました。
 
決して諦めない不屈の精神で、
彼のプレーには熱意と感謝が満ちていた。
 
試合中は自分のミスが続くと、声を上げて悔しがり、
試合後は、床に頭をつけ、静かに祈りを捧げた。
「今日試合ができたこと、ここに集った選手たちが
皆プレーできていることへの感謝です」
と謙虚な人柄と笑顔をみせた。
 
試合後のインタビューでは、
「敗れたことは悲しいが、次の試合に勝ってメダルを目指したい。
不可能はないし、残りの試合で私たちには何でもできるということを伝えたい」
と話していた。
 
この後、31日の団体戦準々決勝では、スペインと対戦して敗れてしまった。
しかし、彼の信念「Never give up in life!」(人生を決して諦めない)は、
世界中に大きな感動という結果を残した。
 
参考:
NHKニュース
・パラホト
・読売新聞オンライン
 

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