ダイヤモンドダスト~青春の思い出~

ある日の出来事

「この本の中にあなたのことが書いてあるよ」
そう言って、義父が一冊の本を私に手渡した。

「えっ? どういうことですか?」

おそらく義父が元気だった26年ほど前、
主人の実家に家族で帰省したときのことであった。

その本に、私のことが書いてあると言う。
その箇所には鉛筆で線が引かれていた。

芥川賞を受賞された、『ダイヤモンドダスト』の著者である南木佳士先生の著書だった。

たぶんその本は『ダイヤモンドダスト』の受賞後に書かれた著書で、
長野県佐久総合病院と若月院長先生について書いてあった。

私のまったく知らないところで、数行ではあったが、
本の中と最後のページに私がお邪魔していたことに戸惑った。

義父からいただいて持ち帰った本は、しばらく本棚にあったが、
2度の引っ越しで紛失してしまった。

本の題名も忘れていた。

ダイヤモンドダストのニュースをテレビで見るたびに
封印したかのように見えた青春の思い出が蘇ってくる。

45年前、私が勤務していた長野県佐久総合病院。
若月俊一院長の農村医学で有名な、田園地帯のある病院だった。

私は臨床検査室に勤務していた。
ペンネームである南木先生は内科の医師だったらしい。

”らしい”とは、当時の私は南木先生を全く知らなかった。
南木先生が、医師と作家という二足のわらじを履いていたことも・・・。

たぶん会話したこともなかったと思う。

臨床検査室の生化学検査室は、患者の血液や尿などの検体と対面するだけで、
患者さんや他の職員と親しく会うこともなく、
ほとんど閉鎖されたような一角であった。

私は、手術室にいた主人の兄の紹介で主人と結婚し、
就職から3年目で病院を去り、東京に嫁いだ。

あまりにも病院で働いた期間が短く、
おまけに、再び娘を遠くに送り出す両親をがっかりさせた。
だからその後の病院の様子を知ることはなかった。

最近、私は南木先生の著書を購入し読んでみた。

『ダイヤモンドダスト』以外は、どれも茶色に焼けた古本だった。

当時の懐かしい故郷が蘇ってくる。
岩波新書の『信州に上医あり』の中に、おそらく私であろうことが書いてあった。

大地のような重みと美しい響きがある著書。
それは信州の美しい自然と人、そして、病院と患者さんを著者がこよなく愛してきた証であった。

歳を重ねると、不思議なことに、
青春のたわいもない出来事がキラキラ輝いて見えてくる。

ダイヤモンドダストのように。

2024年も残すところ10日、
今週末のクリスマスには、北陸や東北、北海道はホワイトクリスマスになるらしい。

極寒で快晴の早朝に出現するというダイヤモンドダスト。
太陽の光を浴びた氷の結晶が、キラキラ輝く季節を迎えています。

皆様!楽しいクリスマスをお迎えください。
南木佳士先生も、どうぞお元気でいらしてください。

[<厳冬の長野県霧ケ峰高原のダイヤモンドダスト YouTubeと写真をお借り致しました ↓↓↓>

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