雑草と言う草はない 害虫と言う虫はいない

幸福に生きるために
最近、道端に咲いている草花に感心が向いてしまいます。
いつも見かけるこの花は「何という名前の花かな?」
道端の小さな野花を携帯のグーグルレンズで検索すると・・・
ハルジオン(春紫苑)でした。
 
4月より始まったNHKの連続テレビ小説『らんまん』
日本が世界に誇る”日本の植物分類学の父” 
牧野富太郎博士をモデルにしたストーリーです。
 
「雑草と言う草はない」と言った牧野博士『らんまん』のとりこになりました。
 
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<牧野富太郎博士>
 
博士は78歳の時・・・
研究の集大成である『牧野日本植物図鑑』刊行しました。
この本は今も現役の植物図鑑として刊行され続けているそうです。
 
1957年94歳で亡くなるまでに
博士が発見した植物や命名した植物は、
1500種類を超えるそうです。
 
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ハルジオン(春紫苑):牧野博士が命名>
 
 
山本周五郎さんが作家として有名になる前に、
新聞記者として牧野博士にインタビューしたそうです。
 
20代だった山本周五郎さんが「雑草」という言葉を口にしたところ、
博士は次のようにたしなめたそうです。

「君、世の中に〝雑草〟という草は無い。                                           どんな草にだって、ちゃんと名前がついている。

私は雑木林という言葉がキライだ。
松、杉、楢(なら)、楓(かえで)、櫟(くぬぎ)・・・
みんなそれぞれ固有名詞が付いている。

それを世の多くのひとびとが、                          〝雑草〟だ〝雑木林〟だのと無神経な呼び方をする。
もし君が〝雑兵〟と呼ばれたら、いい気がするか。

人間にはそれぞれ固有の姓名がちゃんとあるはず。
ひとを呼ぶ場合には、正しくフルネームできちんと呼んであげるのが                           礼儀というものじゃないかね」

(木村久邇典『周五郎に生き方を学ぶ』実業之日本社より)

 
「雑草とか雑木林とか一口に言って片づけてしまう草や木にも、
その一つ一つに名前があり、物語が秘められています」
 
どんな植物にも固有の名前がある。
それを無視して人間にとって要不要だけで分類するのは、
おこがましいと牧野博士は主張したそうです。
 
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ヤマトグサ:牧野博士が初めて命名した花>
 
実は・・・
牧野博士は、昭和23年に昭和天皇に植物学をご進講していました。
「ナスヒオウギアヤメ」は昭和天皇が皇居東御苑で栽培し、
天皇自ら命名した花だそうです。
 
そのような生物学者でもある昭和天皇もまた、
牧野博士と同様の言葉を言ったそうです。
それは、昭和天皇時代の宮中の様子を綴った
『宮中侍従物語』にそのエピソードが登場します。
 
当時、両陛下は皇居の一角にある吹上御苑に住まわれ、
その庭園は深い緑に包まれ、ありのままの自然の姿が残されていました。                                                             
ある侍従が吹上御苑について次のように記しています。

                                                               陛下の強いご希望で庭園としての手入れもほとんど行われず、
自然の姿が残されている吹上御苑は、
両陛下の唯一の運動であるご散策の場でもある。
ここの一木一草は陛下のお仲間であり、
ご公務にご多忙の陛下をお慰めする親しい友人である。

                                                                昭和天皇の静養中に侍従らが皇居周辺の草刈りを実施し、                                         お帰りになった際に一部雑草を刈り残したことをお詫びしたところ、
陛下から呼び出しを受けます。
                                                                「どうして庭を刈ったのかね」
「雑草が生い茂ってまいりましたので、一部お刈りいたしました」
「雑草という草はない。どんな植物でも、みな名前があって、
それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。
人間の一方的な考え方でこれを”雑草”として決めつけてしまうのはいけない」

 
侍従の目には、自然のままに生い茂る植物は、
“雑草”に映ったのかもしれません。
 
しかし、生物学者としての陛下は、
植物を分け隔てすることを善としませんでした。
 
陛下のお人柄や、“親しい友人”である植物への優しさが見えます。
 
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<ナスヒオウギアヤメ:昭和天皇が命名したアヤメ科の変種>
 
また、陛下のもう一つのエピソードは・・・
岩見隆夫さんの著書『陛下の御質問』の中にあります。
 
昭和天皇のご訪問先で案内役を務めた安倍晋太郎農相
「ここから先は雑草です」と説明したのに対し
昭和天皇が意義を挟まれたことがあったそうです。
どんな生きものにも名前があり、
限られた命のなかで精一杯生きています。
 
生命力の強い嫌われ者の“雑草”も、
人間に四季を感じさせ喜ばせたり慰めてもくれ、
水や空気をきれいにし、地球環境も美しくしています。
 
いわんや、人間もまた同じですね。
 
誰でも皆、比べることができない、
かけがえのない尊い命
一人ひとりが唯一無二の存在です。
 
私たちは、自分の考え方や都合で、人や周囲を見てしまいがち・・・
『雑草と言う草はない 害虫と言う虫はいない、いわんや人間もしかり』
 
ですね・・・
 
心にしっかり刻んでおきたいです。
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<武蔵野大学の聖語板>
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<ハルジオン>
 
参考:
・HUFFPOST
・産経新聞
・学校法人武蔵野大学 校友サポートサイト
 <参考文献>入江 相政 編(1985)『宮中侍従物語』角川書店
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