敗者がくれたもの~マージリン・ディダル選手~

笑顔を忘れない
東京オリンピック・スケートボード女子ストリートでは、
西矢椛選手(13歳)が金メダル、
中山楓奈選手(16歳)が銅メダルを獲得した。
 
10代の選手が快挙を成し遂げた試合で、
「笑顔が可愛い!演技に向き合う姿勢が素晴らしい!」
と称賛を集めた選手がいた。
7位に入賞したマージリーン・ディダル選手(フィリピン・22歳)だ。
 
彼女は、競技中、トリックで転倒してしまった他の選手たちを励まし、
一方、ライバルが、自分を超える大技を決めると駆け寄って、
我が事のように喜んではしゃぐディダル選手。
彼女には「ライバルたち」の存在も、
よりよい記録に挑むための「仲間」なのだろう。    
 
迎えた決勝戦では、前半のランで自身の技の失敗が続く中、
後半でも、1本しか成功しないまま、
5本目は難関パートにチャレンジしたが着地で転倒。
転んだままの姿勢で、満面の笑顔で会場へ手を振った。
 
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(決勝戦で転倒した笑顔のディダル選手)
 
決勝戦で複数のトリックで失敗したものの、
見せたのは爽やかな笑顔。
関係者らが座る観客席へ大きく一礼し、
日本語で「ありがとう!」と大きく叫んだ。
 
競技中、終始見せた彼女の笑顔とパフォーマンスが
素晴らしいと絶賛された。
 
<マージリン・ディダル選手はどんな選手?>
1999年4月19日生まれ22歳。
フィリピン・セブ島出身。
セブ島は、貧困層と裕福層の格差問題を抱え、
彼女の最大の障害は貧困だった。
家族は両親と五人兄弟。
父親は大工で母親は露天商とマッサージ師。
彼女のスケートボードとの出会は12歳の時。
友達に借りたデッキに乗り、その楽しさに魅了された。
スケートボードの練習に明け暮れる、その姿を見た両親は
「女の子らしくない」という理由で猛反対。
 
フィリピンではスケートボードは、
許容されたスポーツではなく、
公園で遊んでいると警察に追い払われた。
両親はそんな周りの目を気にしつつ、
愛する娘のためにと厳しい言葉を投げかけたこともあった。
しかし、そんな彼女に転機が訪れた。
たまたま開催された小さなスケートイベントで
友人から借りたデッキでエントリーし、
見事、賞金を獲得した。
このとき彼女は「家族のためにお米が買える」と思った。
 
「家族を貧困から救いたい、
大好きなスケートボードでそれが叶うかもしれない」
という思いが、スケートボードを更に続ける理由になった。
 
そして、2018年、Asian Gamesで金メダル、
2019年のSoutheast Asian Gamesでは
二つの金メダルを獲得
フィリピン出身スケーターでは、
初のStreet LeagueやX Gamesといった
名だたる世界大会への出場を果たした。
 
ストリートで育った一人のガールズスケーターが、
行政を動かした出来事はフィリピンで大きな話題となり、
国民的スターになった。
 
2018年、Times誌が選出する
『最も影響のある世界の10代』25人に、
彼女はシンガーのビリー・アイリッシュらと共に、
リストアップされた。
 
競技で得た賞金を家族のために使い、
立派な家に引っ越しをさせたという。
両親も彼女の大ファンになって応援している。
 
このような貧困な環境でも屈せず頑張る姿が、
今の持ち前の明るさとくじけぬ精神を作った。
 
彼女はかつて、取材に対してこう答えている。
「 スケートボードは人生と同じで、
何度失敗しても立ち上がって進み続けるもの。
結果がどうあれ、私はここにいられることが嬉しい。
 最高の舞台で、限界へ挑めることが嬉しくて仕方ない。」
そう言って笑った。
 
参考と抜粋:
・Garden
・RedBull 「フィリピンを変えたガールズスケーター、マージリン・ディダル」
・Yahooニュース
・フジテレビ“Mr.サンデー”

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