私にとって忘れることのできないエピソードを紹介します。
お祝いを兼ねた「祝賀会」が予定されていました。
この日に予定していた「お祝いケーキ」が、
手違いで注文されていなかったとのこと。
ケーキなしのお祝いではかっこ悪いとのことで
NOと言わせない“切実なお願い“が
突然、それも前日に私のところに来ました。
立派な先生とゲストをお招きしての“お祝いケーキ”を作る
絶対失敗ができません。
その日の夕方、閉店間際のデパートに走り込み、
ケーキに使う新鮮で立派な果物を探しました。
ケーキは2段ケーキから3段に変更され、
私のプレシャーも3倍になりました。
夜通しかけて家のオープでケーキを焼き、
完成したのは当日の朝になりました。
ケーキを急いで会場まで運び、ケーキカットの直前まで冷やし、
カット直前に3つのパーツを組んで3段ケーキにしなければなりません。
高さ60~70cmのケーキは危険がいっぱい、
重ねた瞬間のバランスか心配になります。
2段のケーキは経験あっても3段に挑戦するのは初めてです。
私の限界を超えているのです。
冷蔵庫の中でスタンバイしている“ケーキさん達”に
「シャンと立ってよね」と、よくよくお願いしました。
祝賀会場はたくさんの人でいっぱいになり、
祝賀プログラムが開催されました。
プログラムの進行につれて、
私のハラハラドキドキがしだいに増していきます。
ところが、なかなか祝賀ケーキのお呼びがありません。
遂に、プログラムの全てが終了しました!
(あれっ?? ケーキカットがカット?)
“大先生“が満場の拍手を浴びて退場されました。
「皆さん、長いお時間ありがとうございました!」と
司会者のアナウスがありました。
(良かった…、いろんな心配する必要なかった…
ケーキは明日、皆でいただけばいいんだから…)
参加者も席を立って帰り始め、私がホッとしていると
誰かが大声で叫びました。
「皆さん席に戻ってくださ~い! ケーキカットがありま~す!」
スタッフが駆け込んできて私に言いました。
「ケーキ! ケーキ! 早くケーキを出してください!!」
しばらくして、再び先生がステージに戻ってこられました。
何事かと皆さんの注目の目の前で、
ステージ中央、3つのケーキをドッキングさせました。
ケーキは見事にシャンと立ちました!
盛大な拍手の中でケーキがカットされました。
ステージの脇でその様子を見た私は奇跡だと思いました。
後になって知ったのですが、
司会者がケーキカットの式次第を忘れてしまい、
靴を履き会場の玄関まで帰りかけた“大先生“に
「実はお祝いのケーキがあったのですが…」と
主催者が申し訳なさそうに声をかけたそうです。
すると先生は
「精誠を込めたものは、大事にしないといけません!!」
とおっしゃって、急いで会場に戻って来てくださったのです。
市販のケーキと比べたらはるかに出来の悪いケーキではありましたが
迎える側の精誠(真心)を大変喜ばれたとのことでした。
先生は、会場の一人ひとりと握手をしてくださり、
満面の笑顔を残して帰って行かれました。
“どんなことにも精誠(真心)を込める”
”人の喜びのために生きる”
この貴重な体験から教えていただきました。