二本の記念樹

子育て
私の家には二本の桜の記念樹があった。
一本は家の庭に、もう一本は家の塀に隣接した公園の中に。
 
 いずれも娘二人が小学校に入学した記念の桜の木である 。
 
塀の中の桜は八重桜、長女の記念樹
公園にあるソメイヨシノは、次女の記念樹
 
娘の身丈もなかった二本の桜の木は35年を経て大木になった 。
この二本の桜は娘達のそれぞれの人生に似ている 。
 
塀の中の長女の八重桜。
 あまり枝を伸ばすこともなくおとなしく咲いている 。
桜の季節の終わる頃に、遅ればせながら満開になる 。
虫に食われることもなく濃いピンク色の花を咲かせる。
五分咲きの花は塩漬にして、お饅頭の飾りや桜餅にも使う 。
 
ところが・・・
桜の木は大きくなるので家の近くに植えてはダメと聞いて、
次女のソメイヨシノは家に隣接していた公園にお邪魔した 。
 
次女のソメイヨシノは春になるとたくさんの人を喜ばせる。
薄いピンクに咲いては桜吹雪となって散る。
夏はバス停でバスを待つ人たちに涼しい木陰を作る。 
 
次女の桜は公園の半分を埋め尽くすほどの大木になり、
道路や家の敷地の方まで迷惑も知らずに伸び伸びと枝を伸ばした。 
 
”桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿”とは言うけれど
道路側まで枝を伸ばした邪魔な枝を切らない理由を知った。
 
たまたま公園のベンチでに母が居たとき、
公園課の職員が桜の枝を剪定に来たらしい。
「その木は、家の大事な桜なので切らないでください」
 
母が頼んだというのだ。
それを知った私は、公園課に謝罪の電話をした。
虫が発生すると公園課では、相変わらず消毒もし、
その後は、枝も剪定してくれるようになっていた。
 
心配掛けて助けてもらいながら大きくなったソメイヨシノ。
二本の記念樹、どちらの桜が良いとは言えない 
どちらも、それなりの個性を持って精一杯頑張っている。
何故か娘達の生き方に似ていて
桜の大木を見上げて笑ってしまう 。
 
秋になると、二本の木は紅葉した葉をハラハラと落とし 
美しい落ち葉のジュータンを作る。 
 
早朝に落ち葉のお掃除、私の仕事が一つ増える。 
かき集めた落ち葉が山のようになる 。
 
「もう大変だねぇ~」と言いたくなるけど大事な記念樹・・・
 
<八重桜>
P4150003.jpg
この家を引っ越しして10年になった。
桜の季節になると、娘達の記念樹を観に行っていた。
 
引っ越し数年後、長女の八重桜は家と一緒に姿を消し新しい家が建った。
 
しかし・・・
次女のソメイヨシノの大木は、切られずに毎年あの公園で満開の花を咲かせている。

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