(この記事は以前の記事に加筆しています)
母の本棚からときどき手にする詩集。
柴田トヨ著『くじけないで』
介護施設で生活している93歳の母が
家族一緒に元気な頃に読んでいた詩集。
本の帯には・・・
“ 150万部突破!!
おかげさまで100歳になりました ”
と書いてある。
表紙の裏には、母のぎこちない直筆で
“ とよ子よりいただく ” と書いてあった。
“とよ子”とは私の妹の名前。
母にとって大切な一冊。
昨年9月末、母の介護施設が
コロナのクラスターになり母もコロナで入院。
10日後には無事に退院できたが、
その後、転倒して車いすになってしまった。
ところが・・・
最近、奇跡的に歩けるようになった。
歩くまでに1年がかかった。
独歩を期待はしていなかったけれど、
奇跡を起こしてくださった
スタッフの皆様のご苦労に感謝した。
そして先日、施設から電話があった。
介護用の下着とズボンと靴を買ってほしいとのこと。
ところが、私は困ってしまった。
介護用の靴ってどのような靴?
介護用の下着やズボンとは?
介護用品のカタログを取り寄せてみた。
この3年間、母は痩せた。
コロナで痩せ、誤嚥で食べられずに痩せた。
コロナ禍からの面会では母をハグすることもできない。
母の身体のサイズもわからなくなった。
娘としてこれほど悲しくて恥ずかしいことはない。
こんな時・・・
私は母とリンクする”柴田トヨさんの詩集”を読んでみる。
<母 Ⅰ> 亡くなった母とおなじ
92歳をむかえた今
母のことを思う
老人ホームに
母を訪ねるたび
その帰りは辛かった
私をいつまでも見送る
母
どんよりとした空
風にゆれるコスモス
今もはっきりと覚えて
いる
《くじけない》 ねえ 不幸だなんて
ため息をつかないで
陽射しやそよ風は
えこひいきしない
夢は
平等に見られるのよ
私 辛いことが
あったけれど
生きていてよかった
あなたもくじけずに
<あなたにⅠ >
出来ないからって
いじけてはダメ
私だって 96年間
出来なかった事は
山ほどある
父母への孝行
子供の教育
数々の習いこと
でも努力はしたのよ
精一杯
ねえ それが
大事じゃないかしら
さあ 立ちあがって
何かをつかむのよ
悔いを
残さないために
~柴田 トヨ(1911年~2013年)~
日本の詩人。栃木県栃木市出身。