パラパラと手帳をめくると
ページに挟んだ四つ葉のクローバーが現れる。
この四つ葉のクローバーには思い出がある。
私と牧師は一人の女性と会う約束をした。
しかし、
「体調が悪いから」と言って彼女は家を出て来ようとはしなかった。
彼女はとても体の弱い人で、外にあまり出たがらない。
牧師は彼女の家の近くから電話した。
「気持ちがいいから外に出ておいで! 四つ葉のクローバーを一緒に探そう!
今、あなたの家の近くの公園にいるよ。早く出ておいで! 待っているから!」
しばらくすると彼女がやって来た。
彼女はとても美しい人で、子供のように無邪気で可愛い人だ。
ノーメイクのためか青白い顔に元気がない。
「四つ葉のクローバーを探しているんだ!一緒に探そう!」
と牧師は言ってクローバーの群生の中に3人でしゃがみこんだ。
子どもの頃は、よくこんな風にしゃがみこんで、
四つ葉を探したりクローバーの花で冠を編んで遊んだ。
彼女は牧師の顔を見ると、自分がどれほど辛かったか話し始めた、
彼女の言葉は止まらない。
牧師は、クローバーの群生に目を落としているように見えたが
「うん。うん。」とうなずきながら、じっと彼女の話を聞いていた。
通りがかりの人が、大人3人何をしているんだろうと、
こちらを見ながら通り過ぎて行く。
彼女の話が終わるやいなや
「ほら!あった!」と牧師が突然大きな声で言った。
「どこどこ?」
牧師が指差した先を見ても、どこにあるか見つからない。
牧師は自分で摘まないで、彼女が自分で採るように促した。
いつの間にか、私たちは広い群生の中で、
子供のように四つ葉探しに夢中になっていた。
「ほら! またあった!」
牧師は手招きして、今度は私に採るように言った。
結局、牧師は3本の四つ葉を見つけ、私と彼女は一本も探せなかった。
最後に牧師はクローバーの中で、彼女のために祈祷した。
「きょうからあなたは幸せになれるよ!」と彼女に言った。
彼女の顔に赤みがさして、元気そうな表情になっていた。
お礼を言う彼女に 牧師は言った。
「こんな風に四つ葉のクローバーを、
一緒に探したことを忘れないでください」
手帳に挟んだ四つ葉のクローバー。
くすんだ緑色の四つ葉を見るたびに
「彼女は元気にしているだろうか?」と、懐かしく思い出す。
そして、この牧師のように温かい思いやりをあげられる人に
私もなりたいと思うのです。